真核生物鞭毛の構築と運動調節の研究


鞭毛/ 繊毛の軸糸は約250種のタンパク質から構成される複雑な分子機械です。9本の周辺微小管、中央の2本の微小管(中心対微小管)、ラジアルスポーク、ネキシンリンクなどという構造があります。波動運動は、これらの構造のすべてが協調して働く結果だと考えられますが、様々な証拠から、基本的には9本の周辺微小管とダイニンだけで波動が発生することがわかってきました。したがって、微小管とダイニンの相互作用の性質を研究することが、波動発生の謎に迫る上で重要だろうと考えられます。

9+2クラミドモナス鞭毛軸糸の9+2構造。

鞭毛内には多種類のダイニンが存在します。私たちはそれら個々のダイニンを同定するとともに、特定のダイニンを欠失したミュータントを単離して、その運動性を解析する研究で世界をリードしてきました。ミュータントの運動解析からわかった重要なことは、多種のダイニンはそれぞれが機能的に多様だということと、鞭毛運動の発生には複数種のダイニンが存在する必要があるということです。いま、そのような解析を更に詳しく進めて、個々のダイニンがどのように協調して働いているのかを解明したいと考えています。

oda当研究室で単離されたミュータントの1つ、oda1。外腕ダイニンを欠失している。

細胞運動の研究には生化学的なアプローチだけでなく、運動そのものを解析する生理学的、生物物理学的視点に立った研究が必要です。その方向の研究として、単離した個々のダイニンによる微小管の滑走運動の発生、軸糸ダイニンが高速振動する現象の解析、ダイニン腕の微小管上への再構成、ダイニンを微小管に結合させる蛋白質複合体の同定、などの研究を行ってきました。これらの研究を通して、一見複雑きわまりない軸糸の働きの本質が何であるかをきわめること。それが最終目標です。

・参考となる動画

(mpegファイルが別ウインドウで開きます。1: 1.4 MB,  2: 2.1 MB, 3: 0.8 MB。)
  1. 細胞から鞭毛を単離し、界面活性剤で除膜し、得られた軸糸にATPを加えると、試験管内で運動再活性化する。(低カルシウム条件(10 nM Ca2+ (pCa8)での非対称型波形、1 mM ATP。動画は1/10倍速。)
  2. 同様の実験を高カルシウム濃度で行うと対称型に波形変換する。(0.1 mM Ca2+ (pCa4)、1 mM ATP。動画は1/10倍速。)
  3. 単離鞭毛軸糸をプロテアーゼ処理し、ATPを加えると、ばらけた2本の周辺微小管だけで振動的運動を発生する。(0.5 mM ATP。動画は1/4倍速。)

・関連する現在進行中のプロジェクト

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