文部科学省科学研究費補助金・特別推進研究

■研究課題
「膜交通における選別輸送の分子機構の解明と植物の高次システムへの展開」

■研究期間:
 平成20年度〜平成24年度

■研究代表者
 中野明彦(東京大学大学院理学系研究科・教授)

■研究分担者
 植村知博(東京大学大学院理学系研究科・助教)
 安部 弘(理化学研究所基幹研究所・先任研究員)
 平田龍吾(理化学研究所基幹研究所・先任研究員)
 齊藤知恵子(理化学研究所基幹研究所・研究員)
 黒川量雄(理化学研究所基幹研究所・研究員)
 富永基樹(理化学研究所基幹研究所・研究員)
 佐藤 健(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)

■連携研究者
 上田貴志(東京大学大学院理学系研究科・准教授)


細胞内の膜交通と選別輸送

■研究の要点:
 タンパク質の細胞内輸送の中で重要なものの1つが,オルガネラ間を小さな膜小胞等を介してダイナミックに結ぶ膜交通である。膜交通は,小胞輸送とも呼ばれ,緻密に組み立てられた複雑な分子装置群が,小胞の出芽,繋留・融合などを通じてタンパク質の選別輸送を行う過程である。ここには,一見無秩序にも見える小胞の激しい動きの中でどのようにして一方向性の輸送が実現されるのか,特異性を決めるべき膜レセプターがどのようにして自分自身の局在を決めるのかなど,依然として数多くの謎が残されている。本研究では,遺伝学と生化学(試験管内再構成)による分子装置の同定,機能解析というアプローチに加え,生きた細胞の中で起こっている現象をそのままに「見る」方法論を推進する。モデル系としての出芽酵母を材料とした研究に加え,高等植物の示すさまざまな形態形成や環境応答反応において,重要な役割を果たす膜交通の役割を理解する。


■研究の概要:

膜交通のメカニズムを目で見て理解し

高等植物の生命戦略を細胞の中から探る


 タンパク質の細胞内輸送の中でもとくに重要なものの1つが,オルガネラ間を小さな膜小胞等を介してダイナミックに結ぶ膜交通である。膜交通は,小胞輸送とも呼ばれ,緻密に組み立てられた複雑な分子装置群が,小胞の出芽,繋留・融合などを通じてタンパク質の選別輸送を行う過程である。この選別過程は,交通を整理するためのきわめて重要な鍵であり,これまで数多くの研究者による精力的な研究が進められてきた。小胞形成の際の選別レセプターの同定や,小胞融合の特異性を厳重に決める何重もの安全機構の理解など,着実な進展が続いている。しかし,一見無秩序にも見える小胞の激しい動きの中で,どのようにして一方向性の輸送が実現され,また,特異性を決めるべき膜レセプターが,どのようにして自分自身の局在を決めるのかなど,まだまだ謎も多く残されている。本研究では,遺伝学的に変異株を単離することによって分子装置の役者を見つけ,生化学的な試験管内再構成によってその機能を解析するという,オーソドックスな分子細胞生物学の研究に加えて,生きた細胞の中で起こっている現象をそのままに「見る」方法論を推進する(ライブイメージング)。そこで得た知見から再び遺伝学と生化学のアプローチに戻り,分子レベルにおける徹底的な理解を目指す。モデル系としての出芽酵母を材料とした研究に加え,高等植物の示すさまざまな形態形成や環境応答反応において,重要な役割を果たす膜交通の役割を理解する。これまでに開発した超高感度高速共焦点レーザー顕微鏡をさらに改良,高性能化し,これを駆使して,未解決のまま残されてきた多くの謎を一気に解決していく。また,輸送反応の試験管内完全再構成や人工膜1分子観察などのin vitroのアプローチと,さまざまな変異株の利用などのin vivoアプローチを縦横に進めていく。さらに,高等植物において,細胞内の膜交通が組織レベル,さらには個体レベルでの高次機能で果たす役割を理解するために,シロイヌナズナを材料にした多面的なアプローチを行う。


■キーワード:
膜交通:膜小胞などを介して,小胞体,ゴルジ体など細胞小器官の間を輸送する過程。
ライブイメージング:生きた細胞や組織の中の現象を蛍光タンパク質の標識などを利用して観察すること。新しい光学顕微鏡の開発で,時空間分解能が劇的に向上している。


ページのトップへ戻る