生物を構成する細胞は、細胞膜という生体膜によって仕切られ、細胞内に存在する細胞小器官も生体膜によって区画化されている。それらの生体膜のおもな構成成分は脂質とタンパク質で、脂質が形成する脂質二重層が生体膜の基本構造となっている。細胞内でおこるほとんどの生命現象は生体膜に依存しており、それらの生命現象を分子レベルで解明するには脂質の働きを理解することが必要である。私の研究室では、この脂質分子の機能について解析している。特に、エネルギー変換を担っているチラコイド膜とミトコンドリアの内膜に注目して、チラコイド膜に唯一のリン脂質として存在しているホスファチジルグリセロール(PG)とミトコンドリアの内膜に局在しているカルジオリピン(CL)の生理機能について解析している。これまでの研究から、PGが光エネルギー変換に関わっているタンパク質複合体のアセンブリーやチラコイド膜の形成に重要な役割を果たしていること、CLがミトコンドリアの形態維持に関わっており、正常な根の成長や維管束の分化にも必要であることがわかってきている。これらの脂質が持つ機能を分子・原子レベルで解明することを目指している。
Katayama, K., Sakurai, I. and Wada H. (2004) Identification of an Arabidopsis thaliana gene for cardiolipin synthase located in mitochondria. FEBS Lett. 577: 193-198.
Sakurai I., Shen J.-R., Jing Leng, Ohashi S., Kobayashi M. and Wada H. (2006) Lipids in oxygen-evolving photosystem II complexes of cyanobacteria and higher plants. J. Biochem. 140: 201-209.
Wada H. and Murata, N. (2007) The essential role of phosphatidylglycerol in photosynthesis. Photosynth. Res. 92: 205-215.
Sakurai I., Mizusawa N., Ohashi S., Kobayashi M. and Wada H. (2007) Effects of the lack of phosphatidylglycerol on the donor side of photosystem II. Plant Physiol. 144: 1336-1346.
Sakurai I., Mizusawa N., Wada H. and Sato N. (2007) Digalactosyldiacylglycerol is required for stabilization of oxygen-evolving complex in photosystem II. Plant Physiol. 145: 1361-1370.
