植物は、外界との関わりの中で、ユニークな体づくりのシステムを作り上げてきた。私たちの研究室では、この植物の体づくりの仕組みを、細胞まで還元して解析している。研究の対象としては、植物分裂組織における幹細胞の維持と分化を制御する分子機構、維管束組織のパターン形成を担う分子機構、植物分化全能性を担う分子機構、植物プログラム細胞死の分子機構などがある。これらの分子機構を、ヒャクニチソウ維管束細胞分化実験系、シロイヌナズナ突然変異体、シロイヌナズナ組織・細胞培養系などのモデルシステムを用いて、細胞生物学的、分子生物学的、分子遺伝学的、生化学的に研究している。実験手法としては、シロイヌナズナの遺伝学・分子生物学に加え、共焦点顕微鏡を用いた細胞内分子の動態観察、TOF-MSを用いたペプチドの網羅的解析、DNAチップを用いた遺伝子発現の網羅的解析など多様な解析を行っている。最近の特筆すべき研究成果としては、維管束細胞間のシグナル分子として、促進に働くザイロジェン(アラビノガラクタンプロテイン)、阻害的に働くTDIF(12アミノ酸からなるペプチド)を発見した。また、茎頂分裂組織の幹細胞維持に働くCLAVATA3の分子実体が12アミノ酸からなるペプチドであることを見出した。
Ito, Y., Nakanomyo, I., Motose, H., Iwamoto, K., Sawa, S., Dohmae, N., and Fukuda, H. (2006) Dodeca-CLE peptides as suppressors of plant stem cell. Science 313: 842-845.
Kondo, T., Sawa, S., Kinoshita, A., Mizuno, S., Kakimoto, T., Fukuda, H., and Sakagami, Y. (2006) A plant peptide encoded by CLV3 identified by in situ MALDI TOF-MS analysis. Science 313: 845-848.
Motose, H., Sugiyama, M. and Fukuda, H. (2004) A proteoglycan mediates inductive interaction during plant vascular development. Nature 429: 873-878.
Fukuda, H. (2004) Signals that govern plant vascular cell differentiation. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 5: 379-391.
「植物の軸と情報」特定領域研究班(2006)植物の生存戦略ー「じっとしているという知恵」に学ぶ、朝日選書(朝日新聞社)、pp.234.
